2017/03/31

「クープランの墓」のForlane「フォルラーヌ」

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展覧会と女性

踊りと言えばドビュッシーに「ベルガマスク」組曲という大好きな作品がある。
有名なClaire du Lune「月の光」が入った
この組曲のベルガマスクBergamasqueとは
「ベルガモ風に」と言う意味だが
その実ベルガモという街は
イタリアのミラノよりも北に位置する小さな街で、
あまりドビュッシーと関わりがあるとも思えない。

この曲集の表題に「ベルガマスク」が選ばれた本来の理由は
ポール・ヴェルレーヌの「月の光」の詩の中に
masque et bergamasqueと出てくるからだ。

もうこれはベルガモ風などという意味ではなく
単純に韻を踏むためのヴェルレーヌの引用が
マスクにベルガマスクと来ただけのこと。

本来ドビュッシーはこの曲のタイトルを
「おセンチな行進」Promenade Sentimentaleとしていたのだが、
何度か改訂を行いながら
結果的にこのヴェルレーヌの「月の光」に
タイトルを鞍替えしたことに端を発するのが
この「ベルガマスク」という表題の正体なのだ。

ちなみに、この「マスクとベルガマスク」は
その名を冠したオーケストラ作品が
同時代のフランス人、G・フォーレによって作曲されている。
いずれも見事な音楽となっているのは誠に興味深い。

つまり、音楽というのは厄介なことが多いのだ。
タイトルがついていて、それを調べて行くと
例えその意味がわかったとしても、
それほど演奏の役に立つことはない。

でもまあ、「月の光」と来ればわからなくもないか。
でもベルガマスク組曲、と銘打っても
ベルガモは全く関連性がなかったわけだ。
演奏家にとっては良い迷惑である。

同じピアノ作品で、ラヴェルの「クープランの墓」を見ると
ここで2曲目に出てくる作品にForlane「フォルラーヌ」と言うダンスがある。

この曲は私の思い出の作品で、
独学の後、ようやく音楽を志して
当時フランスから戻られたばかりの作曲家、尾高惇忠先生のところに
ピアノと作曲を習いに行った際
最初に「おい、これ弾いてこい!」と渡されたのがこの作品。

「ベルガマスク組曲」とは違って
本来は6曲からなるピアノ作品だが
オーケストラ作品に編曲された際には
同じ4曲で全体の舞曲が統一されている。

ここでもForlaneフォルラーヌの語源を調べて行くと
やはり面白いことがわかってくる。

イタリア語のFurlana、つまりFuriuli(フリウリ地方)の舞踏の意味が
このフォルラーヌなのだ。

この地方はワインが旨いことで有名で、
地理的にはヴェニスも近いがユーゴスラヴィアも近い。
イタリアでは「ヴェネツィア・フリウリ・ジュリア」と言う。

どちらかと言えば、スラヴの影響が大きい場所で
イタリアでも少し特殊な場所かもしれない。
まあ、イタリアはどこも特殊と言えば特殊だが…(笑)

そんなフリウリ地方のダンスで、本来ならアップテンポの踊りだったものが
16世紀終わりの「アルボシェッロAlvoscello」というフリウリ・ダンスを
カンプラという作曲家が17世紀末にフランスに持ち帰り、
これがイタリアの地元ヴェニスの謝肉祭で有名になって
それをまたF・クープランが18世紀にダンスのスタイルとして取り入れたわけである。

宮廷のダンスに昇華されているとは言え、
やはり農民のダンスに興じる姿が
見え隠れする方が、私の好みかもしれない。

そういうつもりで演奏してみたから、
是非聴いてみて欲しい。

ちなみにピアノじゃなく、オーケストラ・バージョン。
村中大祐指揮Orchester AfiAの演奏。
2015年9月。紀尾井ホールでのライブ録音から。

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